HODIC鈴木・岡田賞 選考委員会報告
2008年度の授賞に関して2009年4月2日に最終の選考委員会を開き、審議いたしました。その結果、貢献賞1件、技術部門 技術賞1件、技術部門 奨励賞1件が選考されました。
授賞理由: ホログラフィック・ディスプレイ研究会に早くから参加し、幹事として研究会の企画担当を長年にわたりつとめ、会場提供を含め本研究会へ多大の貢献をされた。また、日本における電子ホログラフィーの研究においては主要な役割を果たし、更に海外での発表を積極的に行い、国際的にも大いに活躍されている。
対象論文/発表: 「ホログラム導光板を用いたシースルーメガネ型ディスプレイの開発」
HODIC Circular Vol.28, No.3 (Oct. 2008) pp.6-11
授賞理由: ホログラムをカップラとして用いた導光板タイプの画像投影方式で、ホログラムの反射波長幅とディスプレイの色調整とを組み合わせてNTSC比120% の色再現を実現しており、試作品の完成度も高く、ホログラムを利用した新商品の実用化に期待がもてると考えられる。
対象論文/発表: 「水平走査型ホログラフィーにおける共役像除去」
HODIC Circular Vol.28, No.3 (Sep. 2008) pp.18-21
授賞理由: 電子ホログラフィにおいて、SLM像の横縮小・縦拡大と水平走査を組合わせることで、画素ピッチの粗いSLMを用いて視域角拡大と大画面化を同時に達成できることを考案し、実証した。
受賞者のプロフィール
貢献賞:佐藤甲癸(湘南工科大学)
【HODICとのかかわり】
名誉あるHODIC鈴木岡田賞の貢献賞をいただきありがとうございます。鈴木正根氏には胎児の超音波像をもとにHSを作成する際にはいろいろなご指導をいただきました。またSPIEなどでお会いした折にはご一緒に楽しく食事をしながらホログラムの話を伺いました。
岡田勝行先生には学会発表の後でコーヒーを飲みながらよく議論をしました。その際の研究に対する真摯な姿に心を打たれました。またサーキュラーの編集、研究会の準備など大変なお骨折りに頭が下がる思いでした。また以前に鈴木岡田賞選考委員長を努めさせていただいた折に鈴木様の奥様と岡田先生のお父様には大変お世話になりました。
私とHODICとのかかわりは大学に勤めて間もない頃に勝間先生からHODICを紹介された時に始まります。その後企画委員、幹事として長年活動してきました。企画委員長として通常の研究会とは別に公募講演会やホログラム講習会を幾度か開催しましたが、委員の方々の協力で無事やりとげることができ、ホログラムに関心を持つ人々の拡がりに貢献できたことと自賛しています。この度このようなすばらしい方々の記念となる賞をいただいたことに感謝するとともに今後ともHODICの発展に貢献できるように微力ですが努力して行きたいと思います。
【趣味】テニス、山歩き、フルート、オカリナ、鎌倉彫
【モットー】ひらめきを大切にする。最後まであきらめない。
【略歴】ひらめきを大切にする。最後まであきらめない。
佐藤甲癸(さとう こうき)
1945年9月8日生まれ
1975年3月早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了
1975年~1977年 早稲田大学理工学研究所研究員
1977年より現在まで相模工業大学(現在校名変更により湘南工科大学)勤務
現在コンピュータ応用学科教授 工学博士
その間応用物理学会誌編集委員、電子情報通信学会研究専門委員会委員長、映像情報メディア学会(旧テレビジョン学会)、研究会主査、画像電子学会技術専門理事、庶務理事、企画委員、編集委員、通信放送機構(TAO)高度立体動画像通信プロジェクトサブリーダーなどを歴任しました。
【研究分野】
計算機合成ホログラム(CGH)で学位を取り、その後電子ホログラフィ研究に着手し、液晶表示デバイスを用いたホログラムに関する研究成果を学会に幾つか発表しました。またボランティアで行った動画ホログラフィ研究会は後に電子情報通信学会に動画ホログラフィ研究専門委員会となり、研究はその後通信放送機構(TAO)高度立体動画像通信プロジェクトに引き継がれました。最近では3Dスクリーンを用いた空間投影型電子ホログラムに関心を持っています。
【研究業績】
著書
(1)“三次元画像工学”コロナ社 2006年12月出版共著
(2)“ホログラフィ材料・応用便覧”(株)エヌ・ティー・エス
2007年7月出版共著
(3)“立体視テクノロジー” (株)エヌ・ティー・エス
2008年10月出版共著
論文
(1) 佐藤甲癸、樋口和人、勝間ひでとし“液晶表示ディスプレイを用いたホログラフィ・テレビジョンの基礎実験” テレビジョン学会誌45巻、7号、pp873-875 ( 1991)
(2) 佐藤甲癸“液晶表示デバイスを用いたホログラフィ・テレビジョンの検討” 画像電子学会、Vol.23,No.4,pp311-316(1994)
(3) 佐藤甲癸“ホログラフィック・ステレオグラムによるカラー立体像再生システムの最適設計に関する検討” 画像電子学会、Vol.23,No.5,pp499-504(1994)
(4) 佐藤甲癸“液晶表示デバイスを用いたキノフォームによるカラー立体動画像表示”テレビジョン学会誌48巻、10号、pp1261-1266 ( 1994)
(5) 佐藤甲癸“ホログラフィ立体テレビとの出会い” 画像電子学会、Vol.36,No.2,pp175-176(2007)
(6) K.Takano,K.Sato“Full-color electro-holographic three-dimensional display system employing light emitting diodes in virtual image reconstruction”Opt. Eng. Vol. 46, No.9,095801-1~ 095801- 8(Sep. 25, 2007)
(7) K.Sato,K.Takano,M.Ohki”Large viewing angle and image size projection type electro-holography using 3-D screen”,N.7233-43pp723316-1~723316-8(2009)
技術部門 技術賞:吉田卓司、阿久津克之、松村郁夫、中野聡、桑原美詠子、相木一磨、武川洋(ソニー株式会社)
【抱負】私たちは、メガネ型ディスプレイの開発を行っています。ホログラム技術を応用することによって、シースルーを可能にするシンプルな光学系を実現することができました。この技術に対して、名誉ある鈴木・岡田賞をいただいたことを大変光栄に思っております。HODICは、ホログラム技術の現状やホログラフィックデバイスの技術情報を収集する場として活用してきました。この賞を励みに、更なる技術開発を行い、この技術を商品化していきたいと思います。今後ともご指導よろしくお願いいたします。
【略歴】
吉田 卓司(よしだ たくじ)
1994年 早稲田大学理工学研究科 材料工学専攻 修士課程修了
1994年 ソニー株式会社入社、ディスプレイデバイスの研究開発に従事
2000年 虚像視ディスプレイの光学系、光学デバイスの研究開発に従事し、現在に至る
阿久津 克之(あくつ かつゆき)
1998年 早稲田大学理工学研究科 応用物理学専攻 修士課程修了
1998年 ソニー株式会社 入社、ホログラムを用いた投射型および虚像視ディスプレイの研究開発に従事
2002年8月~2003年8月 カリフォルニア大学サンディエゴ校、Ultrafast and Nanoscale Optics Group 客員研究員
2004年 現行方式のシースルーHMDの研究開発をスタートし、現在に至る
松村 郁夫(まつむら いくお)
1998年 立命館大学大学院 理工学研究科 情報システム学専攻 修士課程 修了
1998年 ソニー株式会社 入社
2005年 ホログラムを用いたシースルー眼鏡型ディスプレイの研究に従事、現在に至る
中野 聡(なかの さとし)
1990年 大阪大学大学院 基礎工学研究科 電気工学分野専攻 修士課程修了
1992年 ソニー株式会社入社 光ピックアップ、レーザプロジェクター、ホログラムディスプレイ光学系の研究開発に従事
桑原 美詠子(くわはら みえこ)
1995年 東京工業大学理工学研究科 高分子工学専攻 修士課程修了
1995年 コニカ株式会社入社 電子写真用感光体の開発に従事
2001年 ソニー株式会社入社 電子ペーパーの研究開発
2005年 HMD用ホログラムデバイス材料の研究開発に従事、現在に至る
相木 一磨(あいき かずま)
2000年 大阪大学大学院 基礎工学研究科 機能創成専攻 修士課程修了
2000年 ソニー株式会社入社 光ピックアップ光学系の開発に従事
2005年 HMD光学系の光学設計に従事、現在に至る
武川 洋(むかわ ひろし)
1987年 京都大学大学院工学研究科 物理工学専攻 修士課程修了
1987年 ソニー株式会社 オーディオ事業部 入社
1992年 世界初のミニディスクシステムを商品化(機構設計、ディスクフォーマットを担当)
1995年 米国スタンフォード大学 電気工学科修士課程修了
2000年 投射型および虚像視ディスプレイの開発に従事
2004年 現方式のシースルーHMDの研究開発をスタート
2008年 グロービス経営大学院 GMBA取得
【論文発表】
【講演】
【雑誌掲載論文】
日経FDP2009 産業動向編 「シースルー眼鏡型ディスプレイを実現 導波路に一対のホログラフィック素子を装着」
技術部門 奨励賞:岡田直也、高木康博 (東京農工大学)
【抱負】
広視域かつ大画面のホログラムディスプレイの実現に向けて、新しいホログラム表示方式を提案しております。毎年すぐれた研究発表が行われるHODICから、技術奨励賞を頂けるということをとても嬉しく思います。これからも、ホログラムディスプレイの性能向上を目指し精進していきたいと思っておりますので、今後ともご指導のほどよろしくお願い致します。
【略歴】
岡田 直也(おかだ なおや)
2008年3月 東京農工大学工学部電気電子工学科卒業。
2008年4月 東京農工大学大学院工学府電気電子工学専攻博士前期課程入学。ホログラムディスプレイについて研究を行う。
高木 康博(たかき やすひろ)
1991年3月 早稲田大学理工学部助手、1992年3月 博士(工学)取得。計算機ホログラムを用いた光コンピュータ実現について研究を行う。
1994年4月 日本大学文理学部専任講師。回折光学素子、液晶を利用したアクティブな光学素子について研究を行う。
2000年10月 東京農工大学大学院助教授(現在、准教授)。立体ディスプレイの研究を本格的に開始。特に自然な立体表示とホログラフィー表示について研究。丹羽高柳賞等受賞。
現在、映像情報メディア学会立体映像技術研究委員長、超臨場感コミュニケーション産官学フォーラム立体映像WGリーダー。
【研究業績】
1) 岡田直也,高木康博:"水平走査型ホログラフィーによる大画面化と水平視域角拡大",3次元画像コンファレンス,p.59 (2008).
2) 岡田直也,高木康博:"水平走査型ホログラフィーにおける共役像除去-不要光の除去-",Hodic Circular 28,3,p.18-21 (2008).
3) N. Okada, Y. Takaki: "Horizontally scanning holography to enlarge both image size and viewing zone angle," in Practical Holography XXlll, Proc. SPIE 7233, paper #723309-1 (2009).