HODIC鈴木・岡田賞 選考委員会報告
2002年4月5日(金)10名の委員出席のもと2001年度(第8回)HODIC鈴木岡田賞選考委員会が開催されました。予定時間を大幅にオーバーし、3時間半にわたって慎重に討議がおこなわれ、技術部門2件が選考されました。残念ながら今年度は芸術分野は該当無しと言う結果となりました。
推薦候補に技術分野5件、芸術デザイン部門2件があげられ、惜しくも選外となった候補のなかに、意見が伯仲し甲乙つけがたい成果のあるものがあったことを報告いたします。
対象論文:「多点光源により照明されたHOEの再生特性の計算機支援ホログラム設計ツールを用いた解析」Optics Japan 2001 (7aA5)
選定理由:HOEのデザインを容易に行うためのホログラフィCADツールの開発とその応用の開拓は、ホログラフィを工業的に応用する上で重要な研究と認められる。
代表者:Luis M. Murillo 凸版印刷(株)総合研究所 光技術研究所
:佐藤 敦 凸版印刷(株)総合研究所 光技術研究所
:広瀬 喜一郎 凸版印刷(株)総合研究所 光技術研究所
:溝渕 隆 凸版印刷(株)新商品事業推進本部 技術開発部
対象:2001年度HODICアニュアル展示会展示,平成13年度第3回HODIC研究会発表,Transmission Type Holographic Reflector, HODIC Circular Vol22.No.11,13(2002)
選定理由: 従来、ホログラム反射板は緑色であったが独自の工夫により白色タイプのホログラム反射板を実用化し、世界で初めて携帯電話に利用されるなどその成果は評価に値すべきものである。
受賞者のプロフィール
粟辻 安浩(アワツジ ヤスヒロ)1968年6月生 33歳
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 情報・生産科学専攻
経歴:
1992年 大阪大学 工学部 応用物理学科 卒業
1994年 大阪大学大学院 工学研究科 博士前期課程 応用物理学専攻 修了
1997年 大阪大学大学院 工学研究科 博士後期課程 応用物理学専攻 修了[博士(工学)]
同年 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 情報・生産科学専攻 助手 (現在に至る)
抱負:
京都工芸繊維大学に赴任してホログラフィに関する研究を始めました。エレクトロニクスにおける回路設計技法をホログラフィに応用しようと計算機支援ホログラム設計ツールの開発に着手し,基本機能をほぼ完成することができました.今後は,高機能で高精度なホログラムを設計できるように設計ツールの機能拡張を行うとともに,本ツールを用いて種々の新しいホログラムの設計・試作や計算機支援ホログラム製造に関する研究行いたいと思っています.皆様からのご指導を宜しくお願い申し上げます.
研究業績:
Luis M. Murillo(ルイス M.ムリジョ)1964年12月6日生 37歳
凸版印刷株式会社 総合研究所 光技術研究所
経歴:
1988年 メキシコ National Polytechnique Institute 卒
1990年 メキシコのグアナファト国立大学付属光学研究センター 修士卒
1995年 千葉大学 自然科学研究科 博士卒
同年 凸版印刷株式会社 入社
HOEの応用に関する研究に従事
2002年4月 凸版印刷株式会社 光技術研究所勤務
抱負:
キシコで勉強していたころから、私はホログラムの技術に大変興味がありました。ホログラムをもっと知るため、日本でホログラムの勉強をすることが私の夢でした。そして、幸運にも夢を実現させるための好機に恵まれまして、千葉大学で、ホログラムの勉強をし、凸版印刷でホログラムの研究を始めることができました。
入社してから、総合研究所でホログラムに関する様々な研究を始めました。三次元画像のリアリティを実現するディスプレイの開発や、HOEへの応用展開を進めてまいりました。基本研究から商品化までの一連の流れに関して思うことは、自分の研究グループの協力がなければ、今日の研究成果を実現させるのは、むずかしかったと思います。皆様、どうもありがとうございます。これからもよろしくご指導御願い致します。
研究業績:
佐藤 敦(サトウ アツシ)1965年10月11日生 36歳
凸版印刷株式会社 総合研究所 光技術研究所
経歴:
1990年 千葉大学大学院 工学研究科 画像工学専攻 修了
同年 凸版印刷株式会社 入社
2001年迄 ホログラム光学素子の応用に関する開発に従事
2001年8月 Visiting Scholar at the University of Arizona
抱負:
入社してから一貫してホログラムの産業応用に関する研究開発に従事してきたのですが、いつも目で見ても綺麗ではないホログラムにある種の劣等感を抱いてきました。というのも、私の近くには、とっても綺麗なディスプレイ用途のホログラムを作る天才たちがたくさん居て、幾度となく、その素晴らしい作品で私を驚かせてくれたからです。
今回の受賞で、少しだけ名誉挽回したのではないかと感じています。これからも目で見て綺麗でないホログラムに尽力して、それがホログラムの新たな応用展開になればと思っています。
みなさまのご指導をよろしくお願いいたします。
研究業績:
広瀬 喜一郎(ヒロセ キイチロウ)1963年1月4日生 39歳
凸版印刷株式会社 総合研究所 光技術研究所
経歴:
1985年 千葉大学 工学部 合成化学科 卒
同年 凸版印刷株式会社 入社
1995年4月より筑波研究所(現光技術研究所)に配属。
プロジェクションスクリーン成形の技術開発に従事。
1999年4月より現在まで所属は同じで
ホログラムを用いた光学素子の開発及び生産技術立上げに従事。
抱負:
入社してからは、約10年間全く異分野の研究開発に携わってきました。近年のデイスプレイ技術の発展は目覚しく、縁あって、プロジェクションスクリーン、ホログラムを用いた反射板と大型から小型まで様様な表示技術と触れ合いさせて頂きました。主にプロセスの開発に従事し、立上げまで行ったので感慨深いものがあります。まだまだ駆け出しですが、世の中にホログラムの特徴をよりグレードアップした応用製品開発を今後ともしていきたいと思います。それがホログラムのさらなる展開への一助になればと思っています。みなさまのご指導をよろしくお願いいたします。
溝渕 隆(ミゾブチ タカシ)1969年7月4日生 32歳
凸版印刷株式会社 新商品事業推進本部 技術開発部
経歴:
1995年 京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科電子情報工学専攻 卒
同年 凸版印刷株式会社 入社 総合研究所勤務
ホログラム光学素子に関する開発に従事
2001年10月 凸版印刷株式会社 新商品事業推進本部勤務
抱負:
学生時代からさかのぼりホログラムとの関わりを数えてみると8年が過ぎていました。
入社してからディスプレイに関わるホログラム光学素子の設計および生産技術に携わり、感光材料を扱うため赤色灯の部屋なかで日々奮闘してします。
ホログラムには人をひきつける魅力があります。しかしその反面、条件の制限や作製方法、感光材料など不安定な部分が多いのが事実です。それを乗り越えて量産技術を構築し、われわれのホログラムがたくさん出来あがってくるの見ると感慨深いものがあります。 今後もホログラムの魅力を伝えられる新たな商品を出していきたいと思います。そのために基本を忘れず日々努力していきたいと思いますので、みなさまのご指導をよろしくお願いいたします。