HODIC鈴木・岡田賞 選考委員会報告
技術部門に3件、芸術部門に4件の推薦が挙げられた。技術部門については、いずれも高度な研究成果と認められれたが、大日本印刷中央研究所の研究グループによるフルカラーリップマンホログラムの複製に関する研究はフルカラー複製ホログラムの量産技術として高く評価されるとし、研究グループとして受賞対象とした。
芸術部門ではデザイン関係で4件の推薦があり、デザイン・サンプルあるいはメールで送付されたサンプルを参考にして審査したが、受賞レベルに達していないという意見が大多数であり、残念なことであるが今回は受賞の該当者はなしという結果になった。
今回の選考過程から今後選考基準の再検討などが必要なことが明らかになり、選考委員会において引続き検討することとなった。
対象論文:H. Ohtaki, M. Watanabe, D. Kodama, F. Noujima, and K. Ueda, "Development of Peripherial Materials for Color Graphic Arts Holograms" Proc. SPIE 3956, 245-252, 2000
選定理由:フルカラーリップマンホログラムの量産化技術の開発と性能評価。レインボーホログラムの量産技術はすでに確立しているが、フルカラーの明るいリップマンホログラムの量産は非常に難しい技術であった。植田氏らは、原版の作製工程、連続露光可能な複製工程、また効果的な粘着フィルムなどを開発し、安定した複製が可能な量産装置を実現した。単に装置の開発だけではなく、回折効率の測定、色再現の評価などを詳細に行い、複製ホログラムの質の向上に関する研究も行っている。 フルカラーリップマンホログラムの複製は、ディスプレイだけではなく、HOEの複製にも有効であり、今後様々な分野で応用展開が期待できる。
受賞者のプロフィール
技術部門:植田健治
昭和39年9月28日生まれ 35歳
経歴:
平成元年3月 東京工業大学大学院高分子工学専攻修士課程 修了
平成元年4月 大日本印刷(株) 入社
現在 大日本印刷(株)中央研究所 勤務
趣味:テニス
抱負:
フォトポリマーを用いた量産型ホログラム開発に本格的に取り組み始めてから約十年経ちました。当時は多重記録でさえ手探りで四苦八苦していた状況を考えると"隔世の感"があります。材料とレーザーの進歩が主たる推進力であったのは確かですが、第一の成功の鍵は"担当者の執念"であったと思います。ホログラム開発チームの伝統である自由闊達な環境に加え、様様な専攻を持つ研究員の力が結集され始めて達成されたと考えています。今後ともホログラフィー技術を活性化すべく、研究開発に取り組んで行きたいと思います。引き続きご指導よろしくお願いいたします。
研究業績